チーズ蒸しパンにまつわるとっておきのお話

 久しぶりにチーズ蒸しパンを食べた。といっても、元祖の日糧製パンのものではない。ヤマザキの“北海道チーズ蒸しケーキ”である。

b0057682_12261656.gif 数年前のこと。私がこの蒸しパンを食べようとしているのを見て、知人が目をむいた。「ああっ……そんなの買ってる!」
 彼女は、ヤマザキの工場でアルバイトをした経験のある人だった。
 ところでこの蒸しパン、中央に浮かび上がる北海道の印はどうやってつけられているのか?──ずらりと並んだ蒸しパンがゆっくりとベルトコンベアで移動していく。そうして、焼きごてで自動的にぺったんぺったんと北海道印がつけられていく──そんな様子を私は想像していた。ほほえましき蒸しパンファンタジーである。
 しかしそれを彼女に軽く投げかけてみると、思いがけず逆鱗にふれてしまった。
「もー!そんな簡単なものじゃないんだから!!」
 それでは北海道の刻印の行程とはいかなるものか。……工場の人たちが、北海道の地形をしたプレートを一つ一つ蒸しパンに載せていく。それから天火で焼き色をつけるのだという。プレートで隠れている部分には焼き色がつかないので「北海道印」がくっきりと浮かび上がるというわけなのだった。
 彼女がヤマザキでのアルバイトにおいてもっとも苦労させられたのが、この蒸しパンだったという。大量の蒸しパンに急いで正確な位置にプレートを載せていかなくてはならない。うっかりプレートを裏返しに置こうものなら阿鼻叫喚の様相である。北海道印が反転してしまっては、商品として出せなくなってしまうので、ベテランのパートタイムの人から激しく非難されることになる。もう緊張の連続である。
 北海道の地形が無事刻印されても、まだ安心はできない。蒸し上がったパンを次から次へと運搬用の長いトレイに移さなくてはならない。トレイに置く間隔を誤ると、並べた蒸しパンがぐしゃりと潰れてしまい、これまた商品にはならなくなってしまう。それでまたよく怒られたというのだった。

 そんなことを聞いてみると、なんとも感慨深い北海道印。この裏側には工員さんの汗と涙の物語があるのである。心して頂かなくてはならない。
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by YuyusInstitut | 2005-03-11 12:36 | ビタミンY(脳内研究室)
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