あたらしいMagda Kuh

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 やはり買ってしまいました。ドイツ シュタイフ社の“Magda Kuh”です。2006年に登場したという、最新の牛さんです。これで、30cmクラスのシュタイフ牛が4頭になりました。

 前からいる3頭*は、色柄は違っていても素材は同一、型紙もほとんど同一といってよいかと思われますが、このMagdaでは少し変更点がみられます。姿勢、体型、素材、首輪のデザインなどです。

 姿勢については、左側にややひねっていた首が前面に向けられている点です。一般的なぬいぐるみとしてはより自然になったかもしれません。この変化により、体長の表示が32→34(cm)になりました。
 体型の目立つ変更点は、背筋です。以前よりもより凹方向のカーブがゆるくなり、直線に近くなっています。
 素材は、角と蹄だけは以前と同じですが、全身のモヘア地が粗く密生度の低いタイプに、頭頂部と尾の先がカールした毛になり、乳房が化学繊維(?)からウールフェルトに変更されました。
b0057682_1351342.jpg それから首輪。新たに購入する決め手になったところです。カウベルが最大幅3.8cm→5.8cmと大きくなり、表面に模様が入っています。革のベルト部分も幅広になって縁に浅くラインがつき、留め具に“Steiff”のロゴが入りました。ベルは、大きくなったためか、以前のタイプよりもカランカランとカウベルらしい良い音がします。

 体型・姿勢については、以前のタイプの方が動きや優美さを感じられて好きですが、素材の変更で印象も異なるので、満足です。特に鼻・口元あたりがかわいくてたまりません。




*:・Milka Kuh
  ・Magda Kuh(1999版)

  ・Kuh

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# by YuyusInstitut | 2008-09-07 11:07 | ぬいぐるみ

羊のいる風景 Nr.276-300

 Nr.276『伊勢海老の微笑み』
 残っているのは、ポットに入っている薄いコーヒーだけだった。それにしたところで1杯と2/7ほどしか残ってはいないし、すっかり冷めている。
「入れ直そうとしても駄目だよ。紫熊がコーヒー豆を全部食べてしまったからね。残念だけれど、そういうこと」
 色のついていない声で彼が言った。


 Nr.277『腹部の部屋』
 これは傷ではないのだ、と彼は言った。そしてそれを示すため、実際に開けてみせてくれた。内側に取り付けられた小さい蝶番で開閉できる仕組みで、中はこじんまりとした書斎になっていた。壁は全面書架になっており、本がぎっしり詰まっている。背の高い革張りの肘掛け椅子は、よく使い込まれていて、いかにも座り心地が良さそうである。


 Nr.278『軽い花』
 互いにほとんど触れあいそうなほど木陰に密集している乳牛たちは、まったく親しくないというわけではないものの、会話が弾むほどの仲ではなかった。しかし、そこにある沈黙はむしろあたたかなもので、のびのびとやわらかく、午後2時の木陰を包んでいるのだった。


 Nr.279『高級チョコレート』
 くすんだ青色をしたその草は、つやもなく目立たない印象であったが、私にはわかっていた。その葉の中に極上の水がたくわえられているということを。
 人気がなくなるのを待って、私はペーパーナイフ(骨つき肉をくわえて走る犬の姿が柄になっている)を取り出す。──ナイフの刃が草にふれるよりも、草が私の腕を掴んで締め上げる方が早かった。声を出す間もなく、あっさりと口も塞がれてしまった。


 Nr.280『あなたの小宇宙』
 作り始めるまでは、根拠なき絶対の自信をもって計画していたのであるが──実際に作業が開始してみると、微細なずれやねじれがあちこちに生じ、その場しのぎの間に合わせが混入し、裏返しになったままでもはや手の施しようもない状態のものが割り込みだし……といったぐあいに、状態は悪くなる一方なのだった。
 私はせめて呼吸を整えていようと努めるが、時にはそれさえも思うようにいかない。今日に至っては、注文したコーヒーのお代わりさえ忘れ去られたままのようだ。


 Nr.281『やわらかい実験室』
 すなわち、原材料にミロリウムがわずかでも含まれていれば、液体の色は無色透明から透き通ったブルーに変化する。含まれていなければ、何も変化は起こらない。
 一同は息を詰めて試験管を見つめている。滴が落とされると、中の液体の色彩が揺らいだ(注17)。──赤。ルビーのようにあざやかな。


 Nr.282『集中豪雨』
 私の真上だけがやけに爽やかに晴れ上がっているのは、最新流行の呪いか何かに由来するのだろうか。ただひとしずくのしぶきさえも私には近寄ろうとせず、私の周囲はスポットライトのように丸く照らされているのだった。周囲の人々は、羨望というよりは嫉妬と憎しみに満ち満ちた、黒光りする鋭い視線を私に突き刺してくる。
 ……雨は、なおいっそう激しさを増していくばかりだ。


 Nr.283『ロールケーキ劇場』
 組み立てるのは、さほど難しい作業ではない。問題はその次の着色なのだった。色の調整が適当でないと、ずっと後になって──そう、最終の行程において、致命的な破綻を生じることになる。
 そのため、着色作業にあたっては、誰でも多かれ少なかれ緊張を感じるものだが、とりわけ繊細な彼であってみれば、なおさらのことだろう。
 私は、震える手で刷毛をつまんでいる彼の反対側の手に高級干しいちじくを一つ握らせてから、一瞬だけ微笑んでみせた。


 Nr.284『なめらかな数字』
 ようやく最後の一つを磨き上げて並べると、りんごたちはゆっくりと深呼吸をし、それから静かに浮き上がった。
 りんごたちは一列になって、ゆったりと蛇行しながら西をめざす。夕暮れの薄桃色の光を贅沢なくらいに浴びて。


 Nr.285『瓶詰コレクター』
 クフルさんの作るスープは、とてもおいしい。
 スプーンでくるりとすくって喉に流し込むと、さまざまな香草の風味が幾重にも複雑に折り重なって体にしみ込んでいき、凝り固まっていた疲労がふっと緩むように思える。
 中に入っているのは色とりどりの豆で、どれも見たことのない珍しい形をしているのだった。


 Nr.286『眠い日』
 というのもそもそも彼が危険を知りながらあえて消しゴムの中に隠して持ち込んだ毛艶の良いつきのわぐまはしかしその傲慢と粗暴が丸出しでほら見るがいい奴は今やテーブルを我がもの顔で歩き回りしまいには皆が心から楽しみにしていたさくらんぼのケーキをむしゃむしゃと
──そこで彼が遮って、透明な声でまっすぐに言った。
「つまり、私は今日ケーキを食べることができない。そういうことなのですね?」


 Nr.287『パン屑書簡』
 直視しようとするまいと奴に見舞われることはいずれ避けようがないのだから、あれこれ悩んだところで無駄なこと、というのが彼の言い分である。しかしそう言いながら、この話題を持ち出すのはいつでも当の彼自身だったのだし、彼が以前からこっそりと逃亡の準備をしているということを、私は知っている。
 彼はビスケットが湿ってしまうのを恐れているのだろう。パラフィン紙で慎重にくるんでからアルミホイルで包む作業を、なにげない風にして毎日少しずつ進めていた。


 Nr.288『毛糸玉幻想』
 そう、彼はたとえば毛皮を裏返しに着ていても気にしない──より暖かいのであえてそうしているのだと本人は力強く主張するが、仮にそれが本当であるというならば、どうしていつもは裏返しにしていないのだろう──ような種類の羊である。


 Nr.289『冬のページ』
 指示されたとおり屋台に立ち寄った。メニューには載っていない、揚げパンを2つ注文する。1つではだめだし、3つならなおのこといけない。
 しばらくして、紙にくるまれた出来たての揚げパンが2つ手渡された。皮の外側でしゅうしゅうぱちぱちと油のはぜる音が両手からも伝わってくる。
 本当にこの中に?しかし、試しにかじって火傷をしてみるまでもないのをすぐ知る。──左の揚げパンから小さなつきのわぐまが皮をめくり上げて顔を出し、にやりと笑ったのが確かに見えた。


 Nr.290『11番目にお気に入り』
 そう、それはちょうど、バウムクーヘンの生地層を一枚ずつ慎重にはがしていく作業にも似ていたかもしれない。データが示しているのもつまりそのようなことなのだろう。
 そんなことを私が思っていると、彼はテーブルを立って両手で星空を捧げ持ち、そのままそこで涙をぽとぽととこぼしはじめた。
 彼の重たい涙の粒は、木製のテーブル板に食い込んで、丸いいくぼみをいくつも作った。


 Nr.291『バターの記憶』
 彼が皿に載せて運んできたのは、私の嫌いな濃い緑色をしたチーズだった。しかも少し古くなっているのらしい。この種のチーズ独特の匂いはさらにいやらしく増強しており、私の鼻腔からたちまち喉へ入り込み、胃を内側から侵蝕しはじめた。
──とそこまでタイプしたところで、ノックの音がした。聞こえないふりをする私に構うことなくドアが開く。
 振り返らなくてもわかる、はみ出しそうなくらいの笑顔を顔にのせ、ノーノが立っている。そう、チーズの皿のワゴンを脇に。


 Nr.292『点在の感覚』
 パン生地が逃げ出したのは、ほんの一瞬目を離した隙のことだった。──発酵させすぎてしまったのだろうか?あるいは、私がペカンナッツをくるみで代用したことが不満であったのかもしれない。
 裏口の戸が少し開いていて、その隙間から夕刻の薄紫色の空気がこぼれてくる。
 あのパン生地は、もう町の境までたどり着いただろうか。それとも、木苺の茂みの中にでも身を潜めているのか。
 ──夜が、近づいてくる。


 Nr.293『青の情景』
 これらのガラス玉には、色ごとに固有の分類番号がふられている。私たちは該当する番号の玉を探し、リストの順番どおりにフラスコの口に落としていSく。P653, Zd177, Qrr005, D919, ...
 私たちはそれぞれ集中して慎重に仕事を進める。部屋は、ガラス玉がたてる透き通った音のさざ波でいっぱいになっていく。


 Nr.294『点線の箱』
 そろそろ煮えているはずなのだが、どこか奇妙な様子だ。わきあがる不安を押し殺して息を止め、そっと鍋のふたを取る。
──やはり。中は闇をたたえた底知れない穴である。長い時間火にかけていたというのに鍋は冷えきっていて、静かに何かを思い出そうとしている風にも見えた。


 Nr.295『暴走マッシュルーム』
 本当のところ、色など何色でも構わなかった。私に課せられた役割はただ店員の注意をこちらに向け、いくらかの時間稼ぎをすることだけなのだから。
 店員が、退屈したうさぎのような表情で箱のふたをとる。新色は苦味をふくんだざくろの赤だった。そのつややかな深みに、私は無意識にひきつけられていた。遠くからサイレンの群れが近づきつつあるのを、聞くともなしに聞きながら。


 Nr.296『明日の輪郭線』
 好物の西瓜ガムを購入しようとしたとき、包みの角が一ヶ所つぶれているのにマルレムは気づく。
 角がつぶれていたからといって中のガム自体にさほどの影響はなく、また何者かがマルレムの日曜日を損ねるために故意に生じせしめたというわけでもないとはわかっていたが、それでもマルレムは傷つけられた気持ちになる。よく晴れた日曜日の午前中、マルレムはしばしばこんな風に繊細になることがあった。


 Nr.297『呪いのキャラメル』
 状態はあまりよいとはいえない。コート、ジャケット、本、レコード、革靴──そんなものがそれぞれ積み上がり、不安定な形状の塚をいくつも形成していた。「何をいくら買ってもきりがない」と彼はしばしばこぼすが、あたりまえである(と言おうとするそばから彼は爪先立ちになり、脱いだコートをまた一着山の頂点に重ねようとしている)。
 けれどこの混沌のなかにおいても、彼の相棒である飴色をした年代物のグランドピアノだけは塵一つ寄せつけずに艶をおび、しっかりとした立ち姿を保っていた。


 Nr.298『ホノルル』
 私はゼラチンのオムレツを頼み、カポワはアボカドのグラタンを選んだ。──カポワは、連れと同じものを頼むことを決してしない。それが彼の流儀なのである。
 テーブルに湯気立つオムレツがやってきた。私が注文を示した際の彼の左眉のわずかな運動から、彼が本当はこのオムレツを食べようと強く思っていたということを私は知っているが、彼の自尊心に配慮し、それに気づいていないふりをする。それが、私の流儀なのだ。


 Nr.299『どうせとけてしまう』
 こうして糸を巻くのもこれで最後になるということを、私はそっと自分の頭のテーブルに横たえた。最後にして最高の糸玉を持つ右の掌に意識を集め、この存在感をどうにかして記憶しておこうと試みる。温度、重さ、匂い、表面の触感、いやそんなものではなくて。


 Nr.300『表面張力』
「つまりは苺の断面と同じようなものですね」
 苺の断面?ロロイムの口にすることはしばしば不明瞭な要素に包まれている。たとえばこの場合、断面とは苺のへたに対して垂直に切断した場合に生じるものについてなのか、それとも水平に切断した場合を前提としているのか。……
 私は黙したままガラス鉢に盛られた苺に手をのばし、大粒の一個を取って口に放り込む。彼は何か言いたい様子だったが、私は気になどしない。
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# by YuyusInstitut | 2007-06-09 16:18 | 羊のいる風景