当たり前と思うことを、試しに疑ってみること。たとえば、これまで何とはなしにしてきた自分のやり方、日常について、必ずしも標準ではないかもしれないという可能性について、ほんの少し考えてみる。そんなことも、これまで自分の知らなかった世界の側面を見るきっかけになるものだ。
* * * * * * 話は私の高校時代にさかのぼる。昼休みにいつものメンバーで集まって、お弁当を広げていた。友人の一人がいつも大抵蜜柑を持ってきていた。そして、その日も彼女独特のむき方で皮をむいて食べはじめた。 ──私は蜜柑を食べるとき、まずへたと反対側の柔らかい部分、いわゆる「おへそ」に親指を押し込み、へたに向かって皮をはいでいく。皮をはがされた実を半分に割り、房を一つずつ外して食べる。食べ終わるまで、放射状に広がった外皮がお皿の代わりになる仕組みである。 けれど、彼女のやり方は、へたの方から皮をはがしていくというものだった。堅くてむきにくいであろうに、なぜわざわざへたの方から? 目にする度に何となく気になっていた私は、その日ついに言った。 「皮のむき方、独特だよね……むきにくくないの?」 「え。ふつうこうじゃない?うちではみんなこうやってむいているし」 なんと、予想外の反応である。これは捨ておけない。彼女のむき方がふつう、つまり標準的に行き渡っているものだとすると、私のそれはそうではないということになるではないか。過去の経験からいって、そんなことはないと思う。私としては納得しかねることである。 もちろん、自分の採用しているもの以外にも蜜柑の皮のむき方が存在している、ということは知っていた。たとえば、爪でぐるりと水平に皮に切れ込みをつけていき、蓋付きの鉢のようにぱかっと上下に皮を外すやり方*。ほかにも、林檎の皮をむくように螺旋状にはがしていく方式もあるし、偉大なる蜜柑のシャンデリアも忘れてはならない。──しかし、これらのやり方は一般に、見た目を過度に意識したような場合、あるいは遊戯的要素を含んだ場合等であり、日常における温州蜜柑の外皮除去とは分けて考えるべきであろう。 大多数の人は蜜柑を食べるにあたり、おへその方から皮をむくのではないか。そう仮定してみて(あるいはしつこく食い下がって)、みかんアンケートを開始した。……といっても、教室内を回ってクラスメートに「普段、蜜柑の皮をどうやってむいているか」と訊いてみた、ということなのであったが。 さて、その結果をまとめると、おおまかに3つのタイプに分けることができた。 タイプ1:「おへそ」からむくさらに詳しくいえば、タイプ3は「a.2つに割る方式」と「b.3つに割る方式」の2つにさらに分けることができる。 残念なことに、人数割合の具体的データは残っていない***。ただ、タイプ1が最多数ではあったものの、その割合は5〜6割程度にすぎなかったと記憶している。この程度の割合では、標準的むき方であると宣言できるものではないといえよう。 みかん、そこに個性と自由あり。 *:房の袋を残して食べる場合(私は、見かけも汚いので好きではない)、残った袋を中に入れ、蓋をして捨てると「いい」らしい。 **:タイプ2派の言い分では、へたからむくと、白い筋がとれていいのだそうだが、筋は一緒に食べた方が、食物繊維が取れて体にはいいらしい。そういえば、「シャンデリア」にしてしまった場合も、筋が取り除かれてしまう……。房の袋も一緒に食べた方が良いのはいうまでもない。 ***:アンケートはこのクラスの授業を担当する教員らにも実施された。「また変なこと始めたな」という顔をされつつも、一応データは回収している。ただ、この教員対象のアンケートについては、授業を脱線させてあわよくば潰してしまおうという、生徒による一連の計画の一環として実施されたものである。 ※ 統計学上信頼できるデータが欲しいものです。全国規模で調べたら、たとえば地域・年齢層によって何か傾向などが見つかるかもしれません。今回記事を書くにあたって、参考までにインターネットで調べてみましたが、やはり世の気になるテーマのようです。「みかん むき方」で検索してみると、色々出てきます。
by YuyusInstitut
| 2005-01-12 23:51
| ビタミンY(脳内研究室)
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